Sweet silent night
しなやかなハンドルさばきに見とれてるうちに到着してたのは、この辺りで有名なケーキ屋さん。
ショーウィンドウには宝石みたいな苺が山のようにのっているタルト。
…クリスマスにケーキとかべたなこと、社会人になってからやってないなぁ。
ふとそんなことを思っていると、
「クリスマスっていったらケーキでしょ。
予約したのを取ってくるからちょっと待っててね」
聖さんはそう言った。
…べたなことってこういう人がするのね。
5分後に大きな箱を持って彼が帰ってきた。
「…それ、お店で出すの?」
「うん、今日はクリスマスパーティーだから。
友人がうちを貸し切ってくれたんだ。
もちろんあかりちゃんにも参加してもらうからね」
「え…聞いてないんですけど」
とまどいで言葉を発するまでに数秒かかってしまった。
「店員いないから人手足りてなくて。
アシスタントにこんな可愛い子がいたら、オーナーとしても鼻が高いでしょ?」
にやっと彼が笑ってあたしの頭を撫でた。
少しだけどきっとしてしまう。
…うまく丸め込まれた感じは否めないけど。
「さあ、まだまだ色々買わないと」
こちらの返事も聞かずに彼は車を走らせた。
まったく、聖さんはちょっと強引すぎる。