Sweet silent night


どんなカクテルを作ってくれるのかとわくわくしていた私の期待を裏切って、彼はワインセラーからスパークリングワインを引き抜いて、軽快な音と共に開栓すると、グラスにそそいでこちらへ差し出した。


「クリスマス用に買った僕の好きな国内のナチュールワインです。
カクテルにしちゃうのはもったいないんでそのまま召し上がってください。
あとは…」


彼が次に冷蔵庫から取り出したのは粉砂糖で真っ白くコーティングされたガトーショコラ。


その周りはベリー系のソースと柊の葉で飾り付けられていた。


「わぁ…」


無意識のうちに感動の声がもれてしまう。


「趣味で作ったものなんですけど、よかったらどうぞ」

「え、これお兄さんが作ったんですか?」

「はい。甘いもの好きなんで時々気まぐれで作りたくなるんです。お口に合えばいいんですけど。っていうかチョコレート食べられます?」

遠慮がちにお皿を差し出したかと思えば、急に不安そうな顔をする彼は少し天然が入っているんだろうか。
そんな様子がとても可愛らしく思えた。

「大丈夫です、私も甘いもの大好きなので」

それを聞いて彼は安堵の表情。
割と顔に出やすいタイプみたいだ。

一通り説明を済ませると、彼は自分の分のグラスを持って私のとなりに座った。


近くで見るとさらに彼が綺麗な顔をしていることに気付く。


ふわふわした細い黒髪
人を警戒させない優しい目
すっとした鼻にシャープな輪郭。


見つめているだけで無意識に心臓が高鳴ることに気づいた。


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