Sweet silent night
「…乾杯、しましょうか」
少し小さめの口がそう言った。
グラスを持ち、相手のグラスに軽くぶつけると心地よい音がした。
薄いガラスに口をつけて香りと刺激を楽しむ。
「このワインおいしいですね」
「でしょ?
ケーキもどうぞ」
すすめられるがままにケーキをフォークで掬って口に入れる。
「あ…おいしい」
ビターなのが私好みでうれしい。
思わず口元がゆるんでしまった。
「それならよかった」
それを見て彼は満足気。
「…ていうか、そろそろお客様扱いするのやめてもらえませんか?
色々あなたのこと知りたいのに、敬語なのもなんだか気が引けるし」
「そうだね。
色々知りたい…か。
期待にこたえられるほどの人じゃないけど」
ケーキを半分近く食べおわったところで、やっと彼とちゃんと向き合える体勢が整った。