【短編集】砂糖をかけたみたいに
継母たちを起こさないようにひっそりと屋敷を出ると、門の支柱にもたれ掛かる人影が見えました。
誰かわからず隣を歩くルギオンに聞こうと見上げますが彼は険しい表情で前――その人を見据えていて、聞ける雰囲気ではありませんでした。
仕方なく前を向くと、人影はこちらを向いていて、真っ直ぐにシェリンを見つめていました。
「王子…!?」
待ち望んだ人でした。
彼は緩く唇に弧を描いて頬を少し染めて。
駆け出し彼に飛び込む彼女をふわりと抱きとめました。
シェリンはぐすぐすと鼻を鳴らしながら彼の服をぎゅっと握りこんで広い胸に額をこすり合わせました。
刹那、王子も身をかがめて頬と頬をぴったりと合わせるように寄り添いました。
王子が耳元で囁き、見つめあい、ふたりで笑って―――
「おふたりさん?甘い空気はもういいわ!」
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