【短編集】砂糖をかけたみたいに
音を上げたのは王子の後ろに控えていたディリアスでした。
「いちゃつくのは移動し終わってからにしてください!そろそろ行かないと」
「行く…どこに?」
何も聞かされていないシェリンが首を傾げました。
それに答えたのは未だに甘い空気を醸し出し続ける王子でした。
「まずは隣国へ行ってのんびりしようか。あとは海の綺麗な所と、シェリンが見たい所をゆっくりまわろう」
「…え?何で?」
思わず間抜けな声を出してしまったシェリン。
そんな彼女を愛しみを込めた瞳で見つめて、艶のある声で彼は言いました。
「なんでって…、新婚旅行だよ」
「え、えぇ!?」
突拍子もない彼の発言に彼女は思わず叫びました。
「そこの彼に話を持ち掛けられてね」
すっと持ち上げた視線の先にはルギオン。
「一週間でこれだけのことが出来たのは王子だからこそだけどな。
そいつ、一週間で公爵の死因を調べ上げて、あのおばさんたちの籍を抹消して、お前の後見人を見繕って、結婚まで漕ぎ着けたんだぜ?」
半ば呆れた様子で話すルギオンは次の瞬間表情を一変させた。
「イルザ殿下、わかっていますよね?
……泣かすことがあったら、取り返す。
貴方が相手でも」
「わかっている。そんなことにはさせないが」
彼女の肩を抱いて自分に押し付けながら話す王子にルギオンは苦々しい顔で舌打ちをしました。
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