【短編集】砂糖をかけたみたいに
アンチビターショコラ
「桐真!なんで14日空いてないのよ!?」
「わ、わりぃ…。先輩の頼み断れねぇんだよ…」
焦った顔で手を合わせて謝ってくる桐真。
う、上目遣い可愛い……っじゃなくってさ!
2月14日はバレンタインだよ!?
去年は桐真に騙されててチョコ渡せなかったんだよ!?
それで今年もだなんて!
「なんで断れないのよ!?」
「陽太先輩、その日彼女と過ごすからバイト出ないって言ってて…」
「…でシフト変更!?」
バイト先バーでしょ!?
女の人いっぱいじゃんか!
バレンタインに違う人と一緒に居るなんて…嫌!
そっぽ向いたあたしに彼は更に困ったように眉を下げる。
わかってる、彼が頼まれたら断れないくらい親切なの。
それでもバレンタインは…あたしを選んでくれてもいいじゃん!
「埋め合わせは絶対するから…」
「わかったよ、行って来なよ」
「え、?」
あたしが言った言葉が信じられないのか、目をまんまるくする桐真。
何よ、自分がいいか聞いてきたんじゃない。
「…浮気なんて、やだよ?」
思わず桐真がお客さんに言い寄られるのを想像しちゃって、体育座りして立てた膝に顔をうずめる。
そうしたら後ろからぎゅっと抱き寄せられて、こんな時なのにどきどきしたんだ。
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