【短編集】砂糖をかけたみたいに








よくよく周りを観察すれば。

彼は同じ電車の同じ車両に乗っていることが判明。

彼の名前も知った。

南緒(なお)くんだって。








私が乗る駅の次の駅で乗ってきて、私が降りる一つ前の駅で降りる彼。

いつもは同じ制服を着たお友達と楽しそうに話してる。

でも乗る瞬間とかは目が合って。

その度に手を振ってくれて。

お友達と一緒じゃない水曜日はいつも話しかけてくれて。

南緒くんは派手な髪色のわりに優しくて、言葉のつまるあたしの話をゆっくりと聞いてくれて。

誕生日の話、家族の話、学校の話、その他いろいろ話すことは尽きることなく。

すごく、楽しかった。














それが日常になった1ヶ月後。

彼と会えなくなった。





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