【短編集】砂糖をかけたみたいに
「あ、ここだっけ?お前の家」
「うん」
いつの間にかあたしは自分のうちから数メートルの小道にいた。
「じゃあな」
傘をあたしの手に握らせて別の道へ行こうとする片桐。
「・・・ん?アンタ傘ないんでしょ?持ってっていいよ」
「いや、そしたら濡れるじゃんお前。傘あるしいいよ。・・・あ」
『・・・あ』って何!?
「ちょっ、ちょっと!?どういうことよ!!」
「あ、あは。じゃーな!!!」
そそくさと逃げる片桐。
「待ってよ浅葱!!」
ぴたり。
いきなり止まった片桐。
「名前呼ばれるの久しぶり、じゃん。伊織。
俺、やっぱり名前で呼ばれるほうが好きだ」
かつての幼馴染はそう言って笑った。
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