Voice〜彼の声〜
新しい恋
気が付けば時計の針は夕方の五時を指していた。
「おばちゃん、ちょっと出掛けてきます」
夕飯の準備をするおばちゃんに声をかける。
「美嘉ちゃん」
包丁をまな板に置き、私の方に振り返る。
「はい」
「いつも創のこと想ってくれてありがとうね」
そう言って優しく微笑む。
「これからは違う人のことを想ってもいいのよ」
「……………は…い」
優しく、そして強く抱きしめられ、私は必死に涙を堪えた。
おばちゃんの優しさが腕の熱を通して伝わってくる。
創ちゃんと別の人を想う。
一歩踏み出さないといけないのかもしれない。