Voice〜彼の声〜
高校最後のスタート
日が沈み真っ暗になった運動場の近くにあるプレハブ小屋の外で、私は手を擦り合わせながら立っていた。
「ごめん!待たして」
そう言ってプレハブ小屋から出てきた榊が、小走りで私に駆け寄ってくる。
このプレハブ小屋はバスケ部の部室として去年建てられたもので、まだ外観は綺麗である。
中は見たことがないから知らない。
「いいよ、図書館で勉強してたし」
「それなら良かった」
そう言って、白い息を吐きながら歩き出す。
「もうすぐテストだからね」
「あ〜…俺、全然勉強してねぇよ」
うなだれる榊が何故だか可愛く見える。