Voice〜彼の声〜
慌てて香坂を傘の中に入れる。
「傘入らねぇと濡れるから」
「ごめん……」
俺と目を合わそうとしない。
「何?急に………もしかして告白の返事?」
ふざけて言ってみても、意味がない。
香坂は泣き出した。
「ごめんね…私、好きな人がいる」
好きなやつ?
「………だから、私、榊とは付き合えない」
「……そいつと付き合ってるの?そいつも香坂のこと好きなの?」
「………………」
何も答えない香坂に俺は少し苛立つ。
「片想いなら俺のこと見てよ」
目を見ながら、腕を強く握る。
「………………ごめん」
香坂は俺の手を振り払って、雨の中走って行った。
「なんだよ…」
しばらく香坂が走って行った方を佇んで見ていた。