Voice〜彼の声〜



「…創ちゃんね、私のせいで死んだの」


お墓を見つめながら話し出す。


榊は一瞬、私の発言に驚いた表情を見せたが、静かに私の話に耳を傾けた。



「……創ちゃんがいなくなった時の話はまだ出来ないけど、聞いてくれる?」


「うん」



「創ちゃんは初めてを教えてくれた人なの…」


黙って聞いてくれる榊に言葉を続ける。



「男の子を好きになるのも、その人のことをもっと知りたい、その人ともっと一緒にいたい、もっともっとって…そんな気持ちを初めて知った」


そして気付いたら大好きだった。



「…うん」



「今でもね思い出すの…創ちゃんとの会話、創ちゃんの声、創ちゃんの笑顔、仕草…本当はまだどこかにいるんじゃないかって」


思って…。


でも創ちゃんはいなくて。


私の傍にはもういなくて。


創ちゃんの想いも、創ちゃんへの想いも、全部が嘘だったんじゃないかって…。


涙が溢れ、顔を腕の中に埋める。



そんな私を榊は優しく抱き寄せてくれた。



< 184 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop