Voice〜彼の声〜
「美嘉、おはよう」
大きな声が背後からかけられ、振り向くと同時に「おはよう」と挨拶を仕返す。
「どうした?朝から暗い顔して」
「暗い顔してないよ」
「そう?何か悩み事があるなら言ってよ」
「ありがとう」
笑って返す私に愛美は言葉を続ける。
「もしかしてまた彼のこと思い出してたとか?」
教室に入り、座席につきながら、愛美の言葉に、言葉を詰まらせる私に言う。
「忘れろとは言わないけどさ、新しい恋してみたら?その方がきっと彼も喜ぶと思うよ?」
「新しい恋って言っても今は無理だよ。それにそんな相手いないし」
「そう?よく考えてごらん?案外、近くに運命の彼がいたりするかもよ?」
そう言って愛美は私たちに近付いて来る一人の男子に目を向けた。