Voice〜彼の声〜
「ってぇな…」
ギロっと睨み、指で血を拭う。
「…ごめん、ごめんね」
私はもう榊の気持ちに応えられない。
「……俺って香坂のなんだったの?」
私の両腕を掴み、榊は俯いた。
「………俺のこと、好きだった?」
泣きそうな声に辛い表情をされ、私は言葉に詰まりかけた。
でも…。
ちゃんと言わなきゃいけない。
「…ごめんね、榊。今までありがとう」
それだけ言うと私は走って校舎へと入った。
傷ついた榊の泣きそうな顔が、頭から離れない。
泣くな…。
私が悪いんだから…。
必死に涙を堪える。
私は何度、榊を傷つけたら済むんだろう。
ごめんね、榊…。
私には忘れることなんて出来ないんだよ。