Voice〜彼の声〜
そしてクリスマス当日、創ちゃんは私の家まで迎えに来てくれた。
電車で15分、歩いて10分の所に教会はあった。
外には大きなクリスマスツリーが飾ってあり、中からは子供達の賛美歌が漏れていた。
「賛美歌が聞こえるね」
「…あぁ」
そう言って静かに扉を開け、中に入る。
一番後ろの席に座り、子供達の優しい歌声に聴き入る。
「…可愛いね」
「あぁ」
クリスマスソングに変わり、私も思わず口ずさむ。
創ちゃんは黙って子供達に視線を向けていた。
一時間後、クリスマス礼拝は終わり、教会には私達二人だけになった。
「なんで教会に来たかったの?」
静まり返る教会を、前に移動しながら、創ちゃんは質問してきた。
「昔、お母さんがね、教会は神聖な場所だって教えてくれたの。だから創ちゃんと行ってみたくって」
「…"神聖な場所"か」
美嘉らしいなと小さく微笑む。