Voice〜彼の声〜
「そうだ、チョコ渡したの?」
「え、まだ…」
笑顔に戻る山下に反応が遅れる。
「俺、結局もらえなかったよ」
ははっと笑って教室を出ようとする山下を気付いたら引き止めていた。
「なに?」
「いや、あの…」
引き止めたものの何を言えばいいのか考えていなかった。
「チョコ!…チョコ、あげるよ」
鞄から創ちゃんから貰ったチョコを渡す。
一瞬、きょとんとした山下は困った笑みを浮かべた。
「…ふはっ…サンキュ」
チョコで頭をポンとされる。
そして手で顔を覆いながら深い溜め息を吐いた。
指の隙間から見える山下の目と目が合った。