Voice〜彼の声〜
「美嘉!」
ビクッとして声のした方に目をやる。
「創ちゃん…」
教室に入ってくるなり、私の荷物と腕を掴み引っ張る。
「帰るよ」
不機嫌だ…。
初めて見る創ちゃんに戸惑う。
「あ、山下…バイバイ」
手を振ると山下は困った笑みを浮かべながら、軽く手を振り返した。
黙ったまま靴を履き替え、創ちゃんに腕を掴まれたまま歩き続ける。
「…創ちゃん?」
呼びかけるが返事がない。
歩くスピードが速くて、ついていくのがいっぱいいっぱい。
「創ちゃん!歩くの速い!」
叫ぶとやっと足が止まった。
それと同時に掴まれていた腕も放される。
手首が赤くなっていた。