Voice〜彼の声〜
桜が舞う季節。
入学式が始まろうとしていた。
私は新しい制服を体に纏い、体育館にいた。
校長が長々と話すのをただぼんやりと見ていた。
高校は愛美と山下と友達も数人いたが、私はあまり誰とも仲良くなる気がなかった。
「美嘉!」
廊下から声が聞こえ、目を向けると愛美と山下がいた。
「クラス離れちゃったね」
「…うん」
残念な顔をする愛美に私はただ短い返事をする。
「香坂、ちゃんと来て安心した」
安堵の表情を浮かべる山下に私は小さく微笑む。
愛美も山下も今日の入学式には出席するようにと必死だった。