Voice〜彼の声〜
「ドンマイ、榊」
愛美の笑い声に消されるように榊は「日誌よろしく」とだけ言って席に戻った。
「あんたって本当鈍いよね」
「何が?えっ、もしかして本当は榊が日誌書きたかったのかな」
「いやいやいや。そうじゃなくて」
私のあまりにもとぼけた返答に呆れている。
「どう見てもあんたに気があるじゃん」
「誰が誰に?」
「だから榊が美嘉に」
愛美の発言と共に授業開始のチャイムが響く。
「冗談言わないで」と言う私に愛美は呆れたように笑った。
榊が私を好きなんて、本人から聞かない限り分かんないじゃん。
そう自分に言い聞かせ授業の姿勢へと移す。