Voice〜彼の声〜
私は教室に戻らず、愛美に早退するとだけメールして、そのまま家へと帰った。
その日の夕方、愛美は私の鞄を持って家まで来てくれた。
「榊、ずっと黙ったままだったよ」
榊は教室に戻り、誰が話し掛けてもずっと机に伏せていたらしい。
「美嘉のこと泣かしたって後悔してたよ」
「………傷付けたのは私だよ」
ベッドの上で布団に丸まる私の背中を、愛美は優しく撫でてくれる。
「声、聞きたくないって言っちゃった」
「そっか…」
「………愛美、私、明日からしばらく休む」
「…うん、分かってる」