もう一度 君に会えたら

「ちょっと、このハサミ硬いんだけどねぇ」


そう言って、俺の目の前に鉄で出来たハサミを差し出した。


「何、これ」


「剪定バサミだよ、そんな事も知らないのかい」



眉間にシワをたっぷり寄せて婆ちゃんが叫ぶ。

しらねーよ。

センテイってなんだ、センテ―って。



「花とか枝を切るためのハサミじゃないか。それでも高校生か」


花とか枝とか切ることしねーし。


「油ぬったら動くかねぇ・・・」


長年の愛用品なんだろう。

その鉛色をしたハサミを心配そうに見つめている。

ドアなんかに注すオイルでいいんじゃねーの?と俺は裏庭にある物置へと移動した。

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