もう一度 君に会えたら
「ここで話すの?」


「うん・・・」


「歌うの?」


「ううん、泣いちゃうかも知れないから・・そしたら武が回りに誤解されちゃうでしょ」


もしかして俺に気を使ってくれてんの?


辛そうなのに、そこまで気が回るなんてたいした子だよ。



「俺と密室ってヤバイかもよ」


「…武はそんな奴じゃないよ」



ふざけて言ったのに本気で返される。


ここまで言い切られて襲うバカじゃないし。



「とにかく聞いてやっから入ろっか」


俯く弘子の背中を押し店内へ。


カウンターで適当に住所と名前を書いて部屋へ通される。


店員が出て行った後の部屋は静かだった。


テレビ画面には新曲配信のテロップが流れてるだけ。


浩子は黙ったまま。


ま、焦っても仕方ないし俺は浩子が話し始めるのを黙って待つことにした。


< 15 / 272 >

この作品をシェア

pagetop