もう一度 君に会えたら
俺は視線を床に落とし、ゴクリと目に見えない塊を飲み込んだ。

それじゃぁ…ダメだんだよ。

それじゃぁ…今までと何も変わらない。

未来を勝ち取る為に…逃げちゃダメなんだ。




――自分の親父から。



婆ちゃんは嬉しくないのかい?と首をかしげて不思議そうな顔をしていた。

スッゲー嬉しいよ。

まじ、涙が出そうなくらい嬉しい。


「でも…とりあえず親父に話してみるから待っててよ」


さっき飲み込んだ塊が小さな声になって外へ飛び出す。


親父に話す。

親父に会って話す。

これから逃げてたら、ダメな気がするんだ。

親父が嵌めたと思ってた足かせ。

実は自分で嵌めていたんだ。

親父と離れてしまうのが怖くて。
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