もう一度 君に会えたら


「バカか、お前は」

イギリス行きを決めた事を報告がてら電話した俺に、タケが叫んだ。

もちろん、イギリスに行く事にたいしてじゃない。

イギリスには都会はあるのかと質問した俺に対する罵倒だった。

「あのなぁ、少しは建築で勉強したろ?」

「…したっけ?」

「学校の授業でも試験でもあっただろ?」

「…なにがだよ」

ろくに授業も出た事ない親友に言われる筋合いはない、と、俺は受話器を握りながら口をへの字に曲げる。

「世界の時間の中心はイギリスだろうが」

「・・・は?」

「毎日の時報は、イギリスが基本なんだろうがって言ってんの」

頭がいいのか悪いのか。

言いたい事が分るような分らないような、要領を得ないタケの言い分。

俺は妙に可笑しくなって、声を殺して一人にやける。


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