もう一度 君に会えたら
玄関を開け、庭に回る。
小さな街灯に薄く照らされた縁側に座り、大きく息をついた。
「何か、ワクワクしてんな、俺」
ジーンズのポケットから煙草を取り出して火をともす。
ふぅっ…
吐き出した煙が、目の前で大きな白い塊になってゆっくり形を変えていく。
…初めは形なんてなかった。
家族の形も虚像でしかないと思っていた。
勉強なんて、頑張っても無意味だって思ってたし、女なんて適当に遊んでればいいとも思ってた。
今思い返せば、深い霧の中に迷い込んで周りを見失っていて、ただ強がるだけの自分がそこにいた。
でも、霧はやがて晴れる。
虚像だと思っていた家族は、ちゃんと俺を足元から支えて見守って、どーんと構えていた。
勉強だって、やれば進路の選択枠が広がるし、いい意味での負けず嫌いに火をつけてもらった。
女も…本当に大切に思える奴が存在するって気付いたし。
だんだんとクリアになっていく自分の周りは、それと同時に俺の姿も鮮明に映し出す。