もう一度 君に会えたら
「は?何言ってんの。学校どうすんだよ」


「高校は・・・お婆ちゃんの家の傍の都立の高校に行ってもらう。もう、お父さんが転校の手続きもしてきたから・・・来月からはあっちの学校に通う事になる」


申し訳なさそうに声を詰まらせながら一言一言発せられる言葉に、俺は動揺を隠せずにいた。


「勝手に何でも決めんじゃねーよ。何、俺がオヤジの思い通りにならないから追い出すわけ?ついでに悪い友達からも引き離しましょう、って感じ?」


ふざけんなっ!


そう言い放つと、目の前に置かれたテーブルを蹴り上げた。


「ごめん・・・」


床に散らばった新聞に手を伸ばす母親は、そのまま顔を上げることなく俯いたまま。


                    
「親父の傍から離れる事が出来て良かったじゃないか」


「追い出されたんだぞ」


「自由になるんだろ」
 

「タケがいない毎日なんて有り得ねーし」


心の中で、2人の自分が会話する。


俺は親父から逃げたかったんだ。


そのチャンスをあいつが恵んだことに腹が立つんだ。


自分の足で逃げたかったのに、逃げる場所と時間まであいつに決められるなんて。


俺は所詮ガキなのか―――。
 
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