・音色・オトイロ
前奏 *ピアニッシモ・白*

隣の部屋から聞こえてくる音は

酷く、透き通っていて、私の胸を打つ。


一ヶ月ほど前から聞こえ始めたピアノの音。

いつのまにか、その音に合わせてあたしが、メロディを口ずさむことが日課になっていた。

大抵、ピアノが鳴り始めるのは夜の8時前くらいから。

不規則な時間で終わるけれど、
そのピアノの音が聞こえない日はない。


もともと、あたしは音楽なんかに興味はなくて(それは今も変わらないけど)、
隣から聞こえ始めた音に初めはうるさいな、って思った記憶がある。

でも、隣に苦情を言いに行くほど気にしていないし、まずそんなの言う度胸がない。

だから、不可抗力で聞き始めたピアノにいつの間にか引き込まれていって、今じゃ完全にはまってる。

しかも、弾いてるのは誰かなーとか、
綺麗なお姉さんだったらいいのに。

あ、不細工なおっさんだったら泣く。

とか変なことを考えるまでになってしまった。

いや、イケメンのお兄さんだったら超ラッキー・・・とか。



< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop