LIFE
影
『朱里、ちょっと来なさい』
あれは、ちょうど今から1年前 ――――
私が中学3年生になったばかりの、
暖かな風が吹く春のことだった
『なぁに?お父さん?』
父に呼ばれ、父の目を
まっすぐ見つめた
私は、母の顔を知らない
母は、私が生まれた3日後に
この世を去った
私は、そんな母に似ていると
父は言っている
『実は…今日の夜…そのぉ…』
母がいなくても
父がいた
いつも、いつも、
温かくて大きな父がいた
『仕事が急に入って……そのぉ…』
そんな父が
私は大好きだ
『誕生日の事でしょー!?
いいよ!私なら大丈夫!!』