この想い届け
「あたしトイレ行ってくるねー」
あたし達が通り過ぎようとしたドアが、
タイミング良く開いてメイクの濃いギャルが出てきた。
「あっれ~?
大地じゃん! 久しぶり!」
「おお、佳菜ちゃん、久々」
「最近全然めぇるしてくれなかったね。
あたしー、寂しかったよぉ?」
すごい甘ったるい声で大地くんに話しかける。
さっきの「あたしトイレ行ってくるねー」の声はどこにいったのやら・・・
「あー、ごめんな」
「もぉー!
今日めぇるしてねっ」
「わかったわかった」
「てかぁ~・・・」と言いながらあたしを下から上へと見てくる。
「この子誰」
それはとても低い声。
ガン見されて怖い。
目で『あたしの大地をとらないで』
そう言ってる気がした。
この人大地くんのこと、好きなんだ。
すぐにそんなことは分かった。
「こいつ俺のダチ」
「ふぅ~ん・・・
こんな子と絡んでないで、あたし達と話そう?」
また甘ったるい声に戻り、
大地くんの手を引っぱっている。
でも大地くんはそれを振りほどき、
「俺この後こいつと用事あるから。
水野、行くぞ」と言って歩き始めた。
「う、うん」
そう言って先輩の横を通り過ぎようとした時、
自信満々の顔でこう言った。
「大地はあたしのものだから。
大地と話せたからって自惚れてんじゃねぇよ、地味女」