雫-sympathy affection-〜そこから零れた一握の涙〜
「そしたら、読者の反応が思った以上に多くてさ。それまではそれとなく、まあ読者はいるなぁって感じだったんだけど、それまでのオレはただ単に記事内容を通したオレであって、何一つオレを意識できない状態だったわけでしょ。でも、そんな人だよって教えてみたら、なんかオレがいきなりそこで生きちゃった感じでさ。これって、実はある意味必要でもあったんじゃないのかなって思えちゃってさ」
「あたしのこと、なんて書いたの?」
「や、別に。今、こんな人と一緒にいて、こんな考えを抱きつつ日々をこんな風に過ごしてますって感じで」
「なんか、不思議な気分・・・」
「何が?」
「だって、なんか知らない人に知ってもらうってことになるんだろうけど、何かどんな人があたしのことをわかってるんだろうって思うと、すごく不思議」
「・・・一言じゃ言えないことだよね、それ」
コポコポと音を立てて、抽出されたコーヒーが音もなくガラス容器に溜まっていく。