雫-sympathy affection-〜そこから零れた一握の涙〜
リビングから、莉玖が何か話しかけている。
言うまでもなく、あたしに対してだったんだろうけど。
あまり、大きな声は出したくなかったから、何も答えることもしなかった。
髪の毛を束ねたクリップを右手で外すと、中途半端なまとまり方をした髪の毛は少し重たげな雰囲気を保ったまま、あたしの手でまとめ上げられた。
今日は、どんな髪型にしよう。
いつも、この悩みがあたしを少しだけ憂鬱にさせる。
ホントは、それほど悩んでなんかない。
だけど、その日の気分によって、何だか憂鬱になったり納得できたり。
今日はカーリーな気分だった。
アイロンを取り出すと、あたしはおもむろにスイッチを入れた。
「聞こえた?」
ふいに、また莉玖が顔を出した。
「何?」
「卵がもう切れてんだけど」
「ホント?わかんなかった」
「そうじゃなくて。オレ、スクランブル食べたいんだけど」
少しだけ苛立ちを隠せない表情で、莉玖が訴えた。
「どうしよう・・・」
「・・・ホント、のん気だよ。ちゃんと前もって、買っとけよ」