雫-sympathy affection-〜そこから零れた一握の涙〜
再び、莉玖が見えなくなると、あたしはアイロンのスイッチを消した。
カーリーな気分はタイミングを見失い、アイロンが活躍することはなかった。
ちょっと待っててね。
そんな不思議ちゃんチックな気持ちになってみながら、我ながらこんな自分でもいいのかなんて思ったりもしてみた。
笑みを浮かべながらバスルームから出ると、また莉玖に出くわした。
「何?」
不思議そうに、莉玖がそんなありきたりな質問をぶつけてきた。
「ううん、何でも」
「笑ってんなよ。早く卵買ってきて」
「え、莉玖も行くんでしょ?」
莉玖は笑った。
「まさか」
「え、一緒に行こうよ」
「やだよ、着替えるのめんどくさいもん」
「あたしだって、アイロンを我慢したんだから」
「どうでもいいよ、そんなの。早くね」
「・・・勝手だよね、ホント。じゃあ、シェイク作っといてくれる?」
「いいけど、オレはバニラしか作れないからね」
「チョコがいい」
「無理」
あたしの言葉を聞くこともなく、莉玖はキッチンに向かう。
「あと、何か果物」
そんな言葉が向けられて、あたしは少し変な気分になった。