雫-sympathy affection-〜そこから零れた一握の涙〜
時計の針が、10時を少し回った時間を指していた。
あたしは自分の部屋で支度を整えると、莉玖に一声かけた。
「行ってくるね」
「らっしゃい」
ミキサーを洗いながら、あたしに少し視線を投げかけると、いつもの表情で莉玖は笑った。
「食べ終えたら、海行ってみようか」
そんな言葉を口にしながら、莉玖の笑顔がより一層あたしを包み込む。
いつも、こんな感じ。
心のどこかでは、いつも莉玖を考えてる。
その場所がいつも安心感の中で生まれる、そんな感情だった気がする。
莉玖の笑顔が大好きだった。
いつも、感じていたい瞬間でもあった。
心がいつも莉玖の笑顔を感じていく。
だから、あたしがここで笑っていられる。
莉玖が、一度だけ言った一言。
『玲央だけを考えていたいんだよ。そこにいてくれるだけでいい。求めるものなんて、多すぎてわかんないよ。だけど、玲央が求めたものなら、オレはずっと一緒に感じていける。だから、同じ時間を一緒に過ごしていこうね』