雫-sympathy affection-〜そこから零れた一握の涙〜
「・・・莉玖は、今も感じてるのかな、同じ時間」
水の音にかき消されるかのように、あたしの言葉だけがただ宙を舞った。
蝉の声が、幾分か大きく聞こえた。
いつもより、鮮明に映し出された景色。
暑さは少し強さを増して、あたしの肌を焼きつける。
夏は好きじゃない。
莉玖といる夏は、これが3度目となる。
いつもと変わらないこんな毎日が、ホントは一番の幸せなのかもしれない。
いつまでも続くのかな。
莉玖は答えてくれる。
『続くよ、きっと』
莉玖には不安とかある?
莉玖はいつも笑う。
『不安って?わかんないけど。でも、もしあるとしたら、そこから玲央がいなくなる瞬間なのかもしれないね。だから、ずっとそこにいてよ』
不安はどこからくるんだろう。
何気ない一言のようでも、あたしにとっては特効薬のように心を駆け巡っていく。
不安はもう何もないよ。
そう、言ってくれてるようで。
すべてを忘れて、莉玖の心で笑っていられる。
いつまでも、近くを感じていられる。
この笑顔がある限り。
果物は、チェリーとグレープフルーツにした。
メロンは莉玖があまり好きじゃないから、やめてみた。
ついでに、買い溜め用としてヨーグルトを買ってみたけど。
莉玖は食べてくれるだろうか。
また、困り果てたりして。
『何、この量。買いすぎでしょ、これ』
・・・とか、言いながら。
そんな莉玖を考えて、少し笑みをこぼしながらお店を後にした。