『約束』、
背後から声がしたのは

上島の声だった。

私は足を止める。

同時に一緒にいた麻里ちゃんと

上島の声を聞きつけた

森野と谷口と小池も

私達が止まっている場所を

振り返る。

「どうしたの?」

私はちょっとだけ

優しく言った。

「…何で、俺を殴ったんだよ………。俺の事を嫌いだからか……?」

上島はスカスカの枯れた声で

まだ座ったまま下を向き言った。

「嫌いなんて言ってないし、思ってもない。ただ…、」

私は話の途中に

小池のほうちらっと見た。

そして話を続ける。

「ピッチャーの肩に触るのは、反則だって思ったからね。」

私は小池の方を見て、

ウインクをした。

そして付け足す。

「なんたって、ようやく手に入れた大切なクラスの一員だもん。」

そのお返しにか、

小池は今までに

見た事もない笑顔で私を見た。
  
その後、

上島はもう二度と

2年5組に来る事はなかった。

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