終電、
「…高橋っ。」
夜、付き合ってた頃みたいにブランコにのって待っていた私。
付き合ってた頃みたいに息を切らして走ってきてくれる佐伯。
なんだ、本当に佐伯は、何も変わってない。
「…高橋、話って…?」
「………。」
「…高橋?」
「…ばか。」
「え?」
「佐伯のばかっ!!…なんで、なんで何も言ってくれなかったの!?私、佐伯と別れて、すごく辛くて…。言ってくれたら、佐伯のことちゃんと信じられたのに!」
別れてから一回も泣いたことはなかった。
だけど、言葉を発したと同時に、涙が溢れてきた。
佐伯の不器用な守り方に、気づかなかった私はもっとばかだ…。
「…高橋、これ…。」
制服の袖がめくれて、リストカットの傷が見えていた。
暗ければ気づかれなかったのに、公園の街灯で傷は痛々しく照らされていた。
「……俺のせいだよな。」
下をむいていて、佐伯の顔がわからない。
でも、リストカットの傷に、一粒の雫が落ちた。
佐伯…泣いてるの?
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