終電、





「俺パス。」





と言ったのは修さん。




「今日ちょっと約束あってさ。5時に待ち合わせてんだ。」



約束、って…




「彼女?」




私の言いたいことを代弁してくれたのはかっしーさん。




「…まあ。」




修さんが答えたとき、私のほうを見たけど、目をそらしてしまった。





「あ、今日で一年だっけ?」


「なげーなあ!」


「たしかに!かわいい彼女だしなあー!」



先輩たちは修さんが何も言わない中、勝手に話をしていた。




聞きたくない。




聞きたくないよ。





「名前なんだっけ?」



「あ、たしか志帆ちゃんじゃなかった?」



「そうだ!」





…しほ?




「志穂と名前かぶってんだな!」



私のほうをむいて言う沖さんに、ひきつった顔で笑顔を返すことしかできなかった。




…ううん、笑えてなかったかも。






同じ、名前。


こんなにも自分の名前が嫌だと思ったことはない。




ねえ修さん?




だからなの?



私だけ、名前で呼ばないのは。








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