やっぱり好きだった
忘れる?
なんで忘れなきゃならないんだ。
「どこの誰か分からないんでしょ!」
毎日のようにしつこく言ってくる紗月。
俺が、忘れられないとかいろいろ言っても引かない。
…だから折れてしまったんだ。
「わかった。でも俺はまだ…」
「少しずつでいいから」
そう言って笑った紗月は確かに可愛かった。
言えば利用しているのと同じ。
でも、少しでも彼女に近づけた。
それだけは嬉しかった。
それからだった。
駅で本当に偶然にも彼女とぶつかったのは…。
目が合ったとき、時が止まったかのようだった。
でも、俺はもう彼女がいる。
すごく後悔したんだ。
そのぶつかったのがきっかけで、たまにホームで話すようになった。
彼女の名前は木下華夜。
おばあちゃんの家がこっちらしくて、よく来るらしい。
話していると、本当に優しくてクールだけどすごく可愛くて、ズルイって思った。
たまに見せる笑顔にどんどん惹かれる。
隣にいるだけで鼓動が止まらない。