5時まで待てないッ!
しばらくして、店長が樹の頼んだ生ビールを持ってきた。
「はいお待ち~って、恭介!!あんま散らかすなよ?」
無心で枝豆を弄り続けていた恭介の周りには、その皮だの身だのが散乱していた。
店長に指摘された今も、まだ枝豆に集中している。
だが、その目は焦点が定まっていないように見える。
「おーい、恭介…?」
見かねた店長が呼びかけたのだが、恭介は無言で席を立ち、鞄をワサワサ探ると財布を取り出した。
「えっ、もう帰んの?」
恭介は、ちらりと横目で樹を見る。
「…また明日。おやすみ」
「おっ……おやすみ」
恭介は枝豆代をレジに置くと、さっさと店を出て行ってしまった。
アルバイトなのであろう、店員達の「ありがとうございましたーっ」という威勢のいい声が店内に響いた。
「…樹、あいつなんかあったのかぁ?」
店長は、不思議そうに片眉を上げて問い掛けた。
樹は、さぁ?と苦笑しながら肩をすくめた。