5時まで待てないッ!
ゾゾゾ…とコーヒーをすすっていると、夕日で眼鏡を赤く光らせた和尋が、ニヤリと口を歪めて樹に振り返った。
「お前は、なんでまだ帰らないんだ。いつも一服してから帰っているのは知ってるが、今日は黄昏る時間が長いじゃないか。奥さんと喧嘩でもしたか?」
「…いえ、」
「そうか、これから祐子とホテルで密会か」
「…誰ですかユウコって……」
人をからかうのが好きな男だ。
酔うと、彼のそれはエスカレートする。
だから滅多に、和尋と飲む者はいない。
樹は小さくため息をついてしゅんと俯いた。
「まとまらないんです、考えが」
「そんなふうにうじうじしてっから嫌われんだろ、奥さんにも祐子にも」
「だから、違うって…」
「イツキのバカ、もう知らない!!ってな。どんまーい」
「……部長。」
いい加減、イライラしてきた。