ゴメン、スキ。
少し経って
お手洗いから出ると
二人の話声が聞こえた。
あたしはひっそりと
耳を澄ませる。
「…杪は、君のことをとても頼りにしているようだね」
「いえ、そんな…」
「羨ましい…そんなこと自分が口にしてはいけないのだろうけど」
あたしはただじっと
話を聞いていた。
光志が羨ましい?
あたしを捨てておいて
何言ってんだよ。
「…自分はね、少々肝臓が弱くてね。肝臓移植の手術をしないと治らないんだが、ドナーがなかなか見つからなくてね。」
はははっと力なく笑う
男の声がした。
「だから、まだ少しでも元気なうちにあの子に会いたかったんだよ…」