時。
幸せ、信じたモノが見る奇跡にございます。
その言葉を何度も何度も繰り返して言う、なんと胡散臭い言葉だろうか。
部屋が散らかっている。
紙屑といつかのスーパーの袋とがグチャグチャになっていた。
ソファーにもたれ、タバコを吸うと雨が降っていることに気がついた。
「幸せ、信じたモノが見る奇跡にございます。」
誰にそう言わされたのだろうか、見知らぬ女の目から生気を感じられなかった。
美しく輝いていたのに。
「見知らぬ女」
呟く口からタバコの煙が昇り、天井で壊れた。
変わってしまう町で、変わってしまった君は、何処へ行くのか。
濡れた窓にはカエルが一匹必死にぶら下がっていた。
空、町の景色、君。
いつまでも変わらないこの目に焼き付けたい。
「それが幸せにございます」
そう呟いて、珈琲を飲んだ。
終