宵闇
冷たいオンナ。
コトが終わった後、男は聞いた。

『どうして僕と寝たの?』

まだベッドでぼんやりとしているアタシに聞いた。

どうして、寝たかって?

答えなきゃならない?

アタシは、面倒な声で言った。

『気分。』

男は動揺しながら

『気分で僕と寝たの?僕が好きだからじゃないの?だって、好きだっていってくれたじゃない!?』

背中越しに聞こえる声。

好きだっていったよそれはね・・・。

でも、その時だけだもの。『コトをする瞬間が好き』なだけなんだもの。

仕方ないじゃない。

アタシは男のほうへ向いて言った。

『好きよ。でもアタシが好きなのはコトをする瞬間としている時だけ、誰も本気でなんて好きになれない。』

男の声が少し震えた。

『キミは僕のことが好きじゃないんだね・・・。』

少し悲しそうでそれでいて今を精一杯取り繕うとしている様子が伝わる。

アタシは・・・

アタシは・・・

誰も好きになっちゃいけないんだ。

その人を好きすぎて追い詰めてしまうから。

だから、本気になっちゃいけない。

そう自分に言い聞かせてる。

コトをする時もその一瞬は相手を本気に好きになる。

でも、終わったらアタシは冷めた心になる。

誰でもいいんだ・・・。

けど、誰だっていいわけじゃない。

アタシの感覚が『このヒト』だと思えればそれでアタシは相手に向かい合える。

それが一夜限りとしても。

アタシは冷たいかもしれない。

でも、こうしなければアタシ自身が保てないんだ。

アタシは男に言う。

『好きよ、でもごめんね。それ以上にはなれないの。』

このせりふ。もう何度いっただろうか・・・・。

数えるのも面倒なくらい・・・忘れてしまっていた。
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