宵闇
butterfly。
『絶対、見返してやる・・・。』

アタシはあの夏の日に誓った。

酷い仕打ちとも取れるような彼の行いは、アタシの心をズタズタ切り裂いた。

『愛してる』なんてそんな程度だったのかと泣きながら、笑った。

所詮、そんな程度だったんだ・・と。

逃げ道がある彼にはアタシはいらなくなるとゴミ同様の扱いをした。

そして、『愛してる』なんて言葉は無意味で確証がないものだとあの時知った。

彼は傷つけたなんて思ってないだろう。

むしろ被害者だと思ってるはずだ。

『ふざけるな。』

アタシは、唇をかみ締めて思った。

『絶対に見返してやる。効果的な復讐をしてやる。』

どんなことがあっても許すもんか。

どんな方法を使ってでも後悔させてやる。

だけど、これ以上惨めになりたくない。

これ以上、泣きたくない。

醜くもなりたくない。

忘れたくても忘れることなんて絶対にできない。

そのくらい、アタシに彼は傷を残した。

生傷が痛い。

痛みを感じれば感じるほど、憎悪を抱く。

そして、思う。

『どんな方法を使っても見返してやる。』と。

アタシは、長かった髪を切った。

彼からもらったものは、全部ゴミ箱に捨て、ゴミの日に出した。

作り上げてきた想い出は最初からなかったものとした。

ただ単の復讐劇では、きっとなんとも感じないだろう。

むしろ、また被害者だと騒ぎ出すだろう。

そんな被害者ぶってなんかいさせやしない。

ずっと効果的なやり方で、彼を追い詰めてやる。

アタシをズタズタに切り裂いたと同じような痛みを味わってもらう。

彼に最大のダメージを与える方法は、アタシが変わることだ。

そのために彼の知らないアタシとして、これから生きていこう。

あの頃のような弱いアタシとはもうサヨナラするんだ。


『いつか見返してやる。』

これだけは絶対忘れない。

必ず、同じ痛みを味あわせてあげる。

鏡の中のアタシは、冷たさもあったけど、どことなく強さもあった。

『いつか・・・必ず。』

そう口にしてアタシは空を仰いだ。

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