宵闇
快感。
恋しいの。

あのヒトが恋しい。

あのヒトのカラダが恋しい。

眩暈と胸の息苦しさがアタシを襲う。

あぁ・・・あの時のことを思い出してしまっているんだ・・・。

アタシは目を瞑り、ベッドに横たわった。

あのヒトはアタシを抱く時に、

アタシの服を先に脱がし、

そして、自分の服も脱いだ。

立ったままの状態で向き合う。

あのヒトのモノがアタシのカラダに触れる。

アタシは、どうしようもないくらいの感覚に陥っていた。

眩暈のような・・・抱きしめられると視界が見えなくなるような感覚。

でも、怖さはなかった。

あのヒトはそうしてアタシをいつも抱いた。

アタシのつけているアクセサリーを全部外すように命じた。

『何もないままがいいんだ。』

そうして、立ったままアタシを愛し始める。

アタシの眩暈に似た感覚はこの頃からついたのかもしれない。

立ったまま愛されることに、快感を覚えた。

アタシのカラダはすぐに新しい感覚を覚えた。

あのヒトがいなくなった今、

誰もアタシをそうして愛してはくれない。

あの時の感覚を感じることが出来ない。

あのヒトだけしかアタシを感じさせられない。

アタシは宙を見て呟く。

『恋しいの・・・。』

眩暈と胸の痛みは、あのヒトに抱かれない限り、

消えることはないだろう・・・。

あのヒトが恋しい。

あのヒトのカラダが欲しい。

アタシは苦しさの中であのヒトとの行為を思い出していた。

あのヒトがアタシに与えた快感という愛が、

アタシの中を完全に支配してしまっていた。
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