雪の足跡。




思わず口に出てしまった。

名前を呼ぶのは呆気ないものだ、そう思っていると、猫がトコトコと私の方へやってきた。

思わず抱き抱えると不思議そうにニャアと鳴いて、私の髭に顔を埋めた。

愛らしくて狭い額を撫でてやると、嬉しそうにゴロゴロと鳴いた。

この猫は、自分の名前をルーナだと思ったに違いない。

「春になるまで、こうして窓から雪を見よう、なあ、ルーナ」

そう聞くと猫はニャアと嬉しそうに鳴きまたゴロゴロと喉を鳴らした。


ルーナ、お前がいたら何と言うだろう。お前は動物が好きだから、きっと大喜びするのだろう。

自分と同じ名前の猫だなんて、と困りながら笑うだろうか。


ルーナ。





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