雪の足跡。
眠りから覚めると爺さんのイビキとパチパチという音が聞こえ、さらに耳を澄ますと雨音が聞こえた。

身体を起こし周りを見渡すと、暖炉の火はパチパチと儚く燃え、今にも消えそうだった。

それから窓辺へ行き、椅子へ座り窓を触ると、悲鳴が出そうなほど冷たくまるで氷のようだった。

しばらく外を眺めていると後ろから、うめき声のような音が聞こえた。

「おやおや、えらく早起きさんだな」

爺さんは暖炉に薪を足しながら笑っていた、どうやら先程のうめき声は爺さんのノビだったようだ。

「何か食べたいわ」

そういうと昨日と同じミルクとパンを私にくれた。

昨日よりミルクが熱くなくて食べやすくて嬉しかったから私は「ありがとう」と言った。

「いやいや、ところでほれ、名前は無いのかい?」

今まで生きてきて名前なんて必要あったかしら、と考えていると爺さんは笑った。

「名前が無けりゃ、お前さんを呼べないな」

「仕方ないじゃない」

私がそう言うと爺さんは、コンコン歩いて窓辺の椅子に腰を下ろした。

「おいでんな、雪が降ってきたよ」

「雪は嫌いよ」


そう言って暖炉の傍でうずくまる私を爺さんは笑った。


「ルーナ」


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