雪の足跡。




「おや、もうこんな時間か」

ふとルーナを亡くした時を思い出し、時間を忘れて耽ってしまった。

外の雨が強く窓を叩く。

昨日今日はえらく寒かった、雪が降るのも時間の問題だろうと思い、チラリと外を見ると、何かが動く気配がした。

「泥棒か?いやはや冬眠前の熊かもしれん」

この際一人寂しくいるよりも、泥棒でも熊でも招きたい気分で、今すぐにでも外に出ようとしたが、寒さのあまり毛布を身体に包めてから外に出ることにした。

外は薄暗く自分で作った花壇につまづきそうになりながら、辺りを見渡した。

「はてな、気のせいだったか」

家の中へ戻ろうとしたが、不思議な光景が目に止まり、自然と身体も止まった。

美しい白い猫が我が家を覗いていた。

あまりの白さに、そこにだけ雪が舞い降りたのかと思ったほどだった。

しばらく家を覗くと、白い猫は何やら不満げな顔をして覗くのをやめた。

このままでは何処かへ行ってしまう、なんとか引き止めなければ。

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