コイシイヒト
日付が変わる頃、二次会が終わりお店の外に出た。
少し冷たいと感じてた秋風が、お酒のせいか心地好い。
「じゃ、また一年後!」
友達がタクシーに乗って次から次へと帰っていく。
彼らに手を振っていたわたしの隣に健史が来た。
「健史、またな!」
「おうっ、またな!」
自然と隣に立った健史の横で、胸の奥がちょっとだけ膨らんだ。
こんなふうに並んでいることを当たり前に思ってた頃があったな……て。
それがこんなにも特別なことだったと知ったのは、健史を失ってからだったよね。
感傷に浸りかけていると、沙耶という友達が口を開けた。
「まだ帰りたくな~い!」
えっ……
「次のお店行こー!」