コイシイヒト
沙耶の男友達が経営する小さなお店に入った。
そこはゆったりとした紺色のソファが並んでいるお洒落な雰囲気だった。
少人数のおかげか、自然と健史の隣に座れたわたし。
右半身が健史の腕と脚に触れ、ほんの少し左に座りなおした。
「夕実、時間大丈夫?」
「うん。健史は?」
わたしから目を逸らし、唇の端を少し上げた健史。
健史、変わってないね。
嘘をつかない健史の反応から、奥さんが家で待ってるって伝わってくるよ……。
お酒を飲み始めると、沙耶が健史に質問した。
「健史って浮気を疑われた事ある?」
「浮気? あ~、あるよ。突然『浮気してるでしょ』って言われた」
「えっ、実際してたの?」
「いや」
二人のやりとりに胸がドキドキしたり、ホッとしたり。
胸の中が高鳴り続けてるわたしに、健史が突然話を振った。